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Little Joe(5) [テックスメックス]

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オルケスタあるいはムシカ・テハーナのパイオニアLittle Joeは近年も勢力的に活動を続け2006年、2008年グラミー賞ベスト・テハーノ賞を受賞し、2009年に出したSunny Ozunaへのトリビュート・アルバムの完成度も高かった。そして2010年に出したアルバム、“Recuerdos”も2011年度のグラミー賞を受賞している。
グラミー賞の連続受賞となるとその権威について疑問が出てこないわけでもないが、それぞれのアルバムを聞いた限りでは内容的にどれも文句なし。グラミー賞受賞も十分に納得がいく。
「思い出」とでも訳されるであろうこのアルバム “Recuerdos”にはLittle Joeの簡単なライナーノーツがついており、「あまりにもみごとにわれわれの文化や歴史の一部を形成しているこれらの(このアルバムで取り上げた)素晴らしい名曲を、新しいファンに正しく理解するようにさせることが私の望みなのだ」と記している。言い換えればこのアルバムは、より若い世代のLittle Joeのファンに、彼が歌い継いで来た古典的名曲の良さを伝えることを目的とした作品集、となろう。
しかし実際にこのアルバムを聞いてみると、彼の音楽を長年に渡って聞き続けて来たファンには少しだけ違和感を感じるかもしれない。
アルバム全編にわたってあの特徴的なホーンもなく、ドラムスも入っておらず彼が得意としたオルケスタと呼ばれるフルバンドの編成からはほど遠いものとなっている。
具体的にはほぼ全編にわたってギター、ベース、スチール・ギター、フィドル、というシンプルな編成になっており、これにドラムが加わればカントリー音楽と同じではないかとさえ思わせる。しかし取り上げた曲はメキシコ歌謡、ノルテーニョの古典ばかりで、チカーノ・カントリーというカテゴライズもこのアルバムには馴染まない。
ではこれはいったいどういうアルバムなんだろう。
あまりにも個性的・オリジナルな作品にその性格付け試みるのはナンセンスだと承知の上で書かせていただけば、「メキシコ歌謡のクラシックの本質をわしづかみにし、シンプルに料理してリスナーに提供する彼の手腕が真骨頂のアルバム」、とでもいうべきか。Little Joeの圧倒的な歌唱力およびシンプルな楽器構成と卓越した演奏能力をもって、彼らの遺産ともいうべきメキシコ歌謡のメロディと歌詞を装飾を排して原型に近いままに、聴衆に伝えているのである。
彼がなんでこのようなアルバムを作ろうとしたか、想像を巡らすと面白い。
たとえばフィドルに注目すると、彼が幼い頃からラジオなどを通して聞き慣れたウエスタンスウィングからの影響かなとも思わせるし、あるいは実際に南テキサスの綿畑で綿摘みの仲間が仕事の合間に演奏したフィドルチューンが記憶の底に残っていたのではないか、とも思わせる(綿畑でフィドルチューンを演奏することついては、Bob Willsのアルバムライナーノーツなどで触れられている)
ギターの音色やスティールギターの音色も、彼が幼い頃にラジオから流れて来た音楽の感じを再現しているのではないか?
彼の思い出あるいは記憶はいったいなんだったんだろう。
このアルバム“Recuerdos”は、そんな思いを巡らせてくれる回顧アルバムである。


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