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Sarah Fox/ Joel Guzman [テックスメックス]

 

前回紹介したSteve Jordanが1960年代に登場し、1970〜80年代に活躍した天才的アコーディオン奏者というならば、Joel Guzmanは1970年代に登場し、1980〜90年代(そして現代までも)活躍した天才的アコーディオン奏者といえるでしょう。
 両者の音楽へのアプローチは対照的で、前者が常にフロントに立って、アーティストとしてリードボーカルもこなしていたのに対し、後者は裏方に徹してMusica Tejanaを縁の下から支え続けてきました。彼の代表的な仕事はやはり長年にわたって努めて来たLittle Joeのバンド、La Familiaにおけるアコーディオン演奏ですが、1990年代、EMI Latinを中心に、Selenaはじめ数多くのセッションワークをこなしてきたことも忘れられません。このブログではLos Super Sevenにおける裏方としての彼の活躍を指摘しましたが、そのアルバム"Los Super Seven"はグラミー賞を受賞したそうです。
 そんな彼が奥さんのSarah Foxと共同で作成したリーダーアルバムが、この2006年に発表された"Latinology"(GUZMANFOXRECORDS GFR128)。わたしが感じたところをかいつまんで述べていきます。
 まず楽曲から。ほとんどの曲のリードボーカルは奥さんのSarahが担当し、いずれの曲も奥さんに合わせて作られた印象です(英語、スペイン語、両方あり)。そこから敷衍すると、Sarahは、多分オースティン周辺で活躍するブルース・ソウル歌手、例えばLou Ann Burtonのような、の一人という感じで、彼女の声はちょっとAretha Franklinに似ています。キャリアをみてみると、若いころLittle Joeのバックコーラスをやっていたそうで、その頃Joelと知り合ったのでしょう。曲はクンビアありブルースあり、サンフランシスコ風ラテンロックありで、夫婦の音楽の好みが反映されています。
 Latinologyという発想はこの辺りからくるのかもしれません。Santana風のギターが結構多い。La Onda Chicanaの代表といわれたLittle Joeのもとに長くいたJoelならではという感じで、Joelのアイデンティティーはこのあたりにありそうです。ちなみに、彼自身が歌っている"At The Dance "という曲では、多分このアルバムで唯一テックスメックスの要素が登場します。彼が過去に影響を受けたアーティストの名前が次々に出てきます。Little Joeをはじめ、Sunny Ozuna, La Mafia, Latin Bleedなどのバンド名や、"She's about a mover"なんていう曲の名前も聞こえてきます。またクンビアなどの曲は、ワールド音楽からの影響かもしれません。彼自身、バジェバートのアーティストとも共演し、刺激を受けたようでそれが反映されているかもしれません。以下YouTubeからワールドミュージック的ジャムセッションを再録。

http://www.youtube.com/watch?v=fz9Fiq0nKtU&mode=related&search=

 こうして、おそらくは彼ら夫婦のこれまでの音楽体験や、影響を受けた音楽をもとに、彼ら自身の"Latinology"がデザイン化されていったのかもしれません。
 サウンドのクオリティーはさすがにハイレベルで、プロデューサー経験も豊富なアーティストの仕事といえます。細部まで細心の注意が払われており、リズムトラック、ギター等の音入れ、もちろん一方の主役であるJoelのアコーディオンも完璧といってよいでしょう。といってもテックスメックスの香りは巧妙に排除されていて、あくまで楽曲があり、そのアレンジのもとに演奏されているという感じです。
 彼がなぜこのようにテックスメックスを封印に近いまでに排除したのかはよくわかりません。
 このCDはテックスメックスというカテゴリーのなかで商業音楽として制作されたものではなく、オースティンという、白人によるブルースやロック、カントリー音楽が盛んな都市において、アーティスト個人が自らの出自や音楽観を確認するために、企画の段階から練りに練って作られたGuzman夫妻によるパーソナルな作品、というのがわたしの理解です。

 
 
 
 

 


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サユール

お久しぶりです。

ホエル・グスマンについては恥ずかしながら長谷川さんのご指摘があるまでLOS SUPER SEVEN の中で弾いていることに気づきませんでしたが素晴らし音楽家ですね。
このアルバムも素晴らしいですが、YOUTUBEの中にもある様々セッション映像を見るにつけ引き出しの非常に豊富な人という印象もあり、いわゆる生粋のテハーノといった感じではありませんね。

このCDは以前から存在は知っていましたがチョッと聞いてみたくなりましたよ。

今後のCDレビューもたのしみにしております。
by サユール (2007-09-16 18:02) 

長谷雅春

サユールさん、ご無沙汰です。コメントありがとうございます。JoelはYoutubeでは結構pure Conjuntoのスタイルをとっていて、しかもボタンアコーディオンのクリニックまでやっているんですね。このCDは奥さんやJoe Elyの影響が強いかもしれませんね。あるいはJoelは人の影響を受けやすい人かもしれません。このCD一枚だけではまだまだ氷山の一角にすぎないと思います。
by 長谷雅春 (2007-09-16 23:37) 

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